高齢者は自由に使える時間がたくさんあります。その時間を新たな勉強の時間にあてたいと思っている人も多いと思います。
年をとってからの学びは、新しい知識を得るインプット型よりも、自分が持っている知識を文章にしたり、人に話して聞かせたりするアウトプット型をおすすめします。
これは大ベストセラーとなった『思考の整理学』の著者で、英文学者・言語学者であった故・外山滋比古さんが提唱しているのですが、私もこの考え方を賛同します。
昔はもの知りなお年寄りが尊敬されたものですが、今はみんなスマホを持っていて、知らない言葉もすぐに調べられる時代です。そんな時代に、偉そうにうんちくを傾けても、誰からも見向きにされないでしょう。
もうひとつ、昔勉強したことは、時代とともにアップデートされていきます。例えば、昭和生まれの人なら、鎌倉幕府が成立したのは1192年だと習いました。「いいくに(1192)つくろう鎌倉幕府」と語呂合わせで暗記したと思います。
しかし、今の子どもたちは1185年と習っています。1192年は源頼朝が征夷大将軍に任命された年ですが、それより前の1185年に平氏が滅亡し、源氏が全国的な支配権を確立したことから、現在の教科書では1185年説をとるようになりました。
1985年と習った世代の人に向かって、「鎌倉幕府はね、1192年に成立したんだよね」と話したら、「このおじいさんは、少しボケちゃったのかな?」と思われるかもしれません。
このように、今はものを知っているだけでは尊敬されない時代です。にも関わらず、勉強して、もの知りになろうとする人が相変わらず多いのです。
もちろん、知識は不要だといっているわけではありません。知識を伝える話し方がおもしろいかどうかが大事なのです。
例えば、好みは分かれますが、武田鉄矢さんや池上彰さんには、彼ら独特の語り口があり、つい引き込まれて聞いてしまいます。
武田さんや池上さんには、語り部としての才能があります。これに対し、クイズ番組に強い芸人がワイドショーでコメンテーターをしているのを見たことがありますが、そのコメントが実につまらないのです。知識があっても、語り部になっていないからです。
この語り部としての才能は、アウトプットの能力です。年をとったら、むしろこの能力をみがいたほうが尊敬されるでしょう。
◆新常識 話し上手になるために練習する
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観光地に行くと、ボランティアで地域の観光ガイドをやっている高齢者をよく見かけます。彼らもその地域に関する詳しい知識は持っていますが、それだけでは観光客に相手にされません。
お寺や神社の由来といった知識は、それこそスマホですぐに調べられる時代ですから、マニアックな知識やニッチな情報を持っている人のほうがありがたがられます。
実際、人気のガイドさんは話し方の上手な語り部です。でも、最初から話し上手だったわけではないでしょう。何十人、何百人もの人をガイドして、そのスキルを学んできたのだと思います。
このようなガイドさんたちの学びこそ、今お話したインプット型からアウトプット型への転換なのです。
日本人は読書好きで、ものすごく知識が豊富な人が多いのに、その知識を人にうまく伝えられない人が多いと思います。
例えば、「昨日読んだ本がおもしろかった」と人に伝えたとします。すると「どんなところがおもしろかったの?」と返されます。でも、そのおもしろさをうまく伝えることができない。そんな人が多いような気がします。
話しの聞き手からすると、一生懸命話してくれているのはわかるけど、何を伝えたいのかさっぱりわからない。だから、話がつまらなくなって、飽きてしまうのです。それ以上話し続けたら、相手から迷惑がられるだけでしょう。
◆アウトプットするトレーニング
自分の話を他人がおもしろがってくれない、と悩んでいるなら、インプットした知識をアウトプットするトレーニングをしなければなりません。
読んだ本のおもしろさを人に語りたいのであれば、おもしろさを伝えるための練習が必要だということです。
練習相手はどうすればよいのでしょうか。家族が聞いてくれるなら、それでもよいのですが、うまく話せないのであれば、嫌がられるかもしれませんね。
別に人に聞いてもらう必要はありません。シャドートレーニングでよいのです。誰かに話しかけるように語ってみるのです。
録音して聞き直すようなめんどうなことはしなくてかまいません。声に出してしゃべってみれば、「あっ、あまりうまくしゃべれてないな」ということはわかるもの。そうやって、アウトプットの練習をしてほしいと思います。
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◆新常識 本はときどき音読する
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声に出して読むと認知症リスクが減る
人に聞かせるアウトプットの練習で大事なのは、声に出すということ。どう伝えるべきかを考えながら、声に出してしゃべることは、前頭葉を活性化させます。
声に出すことは、知識のインプットでも効果があります。本を読むときも、音読すると理解が深まるからです。
黙読すると、言葉は脳で文字として認識され、言葉の意味を理解するだけで終わってしまいます。
これに対し、音読は記憶や情報を組み合わせて、自分なりの考えを導き出す機能を高めてくれます。
もちろん、一冊の本をすべて音読するわけにはいきませんが、読んでわかりにくい部分は、音読するとわかることがあります。
また音読すると、文字の意味だけでなく、文章のリズムも体感できます。このリズム感は、人に話して聞かせるときにも生かされます。
声に出すと、もうひとつのアウトプットである「書く」という作業にも役立ちます。人に読んでもらえる文章の勉強にもなるのです。
声を出す習慣は、認知症の予防にも役立ちます。私が診ている認知症の患者さんで、詩吟のたしなみがある方が何人かいらっしゃいます。
詩吟をたしなむということは、声を出す習慣があるということです。この患者さんたちに共通するのは、他の人たちに比べて認知症の症状の進行がゆるやかだということです。だから、声を出すことは脳を活性化させるという実感があります。
声を出す習慣がないと、食べものを嚥下する能力も衰えやすくなります。その結果、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まります。
2024年の日本人の死因の第6位は誤嚥性肺炎(肺炎は第5位で、肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると第4位)です。高齢者の飲み込み障害に対するトレーニングとしても、声を出すことは効果があります。
いずれにしても、人に聞かせる練習をするときは、実際に声に出すようにしてください。頭の中で考えるより格段に上達するでしょう。
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高齢者の学びはアウトプット型がよい
感情の老化は老いを加速させる
タバコと同じくらい体に悪い
認知機能の低下を防ぐ"楽しい全身運動
認知症の不安が減る"ほんの少しの運動
脳のヨボヨボ化のサイン
脳の疲れが取れる「食事中」の習慣
脳の老化を防ぐために頭を使うべき
ボケたくなければ、手書きで日記をつける
便利グッズを駆使してしぶとく生きる
自立した高齢者になるために必要なスキル
おしゃべりロボット ロミー
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